三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2014年4月13日放送

彫刻刀で丹念に繊細に切り抜く、芸術性の高い鈴鹿の伝統文化『伊勢型紙』。
ライフスタイルの変化や染色の機械化によって需要が減りつつある『伊勢型紙』の文化を守るべく、お菓子屋さんが新たな挑戦をします!

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伝統工芸『伊勢型紙』は、着物などの生地を一定の紋様や柄に染めるために使われる型紙のひとつ。
江戸時代から伝わる日本の伝統文化で、そのほとんどは、三重県鈴鹿市で生産されています。


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伊勢型紙の彫り方は、基本的に4つ。
上画像は刃の形が決まっているもので、繰り返し重ねて彫っていく『道具彫り』。
中央画像の道具は、すべて職人さんの手づくりです。
下画像は半円形の刃先で、1回転して彫っていく『錐彫り』。代表的な柄は「鮫小紋」。

他に『縞彫り』、『突彫り』という手法があります。


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こちらは伊勢型紙を使って染められた着物。
人の手で彫られ、着物に流し込まれたその紋様は、気が遠くなるほどの手間と時間がかけられた、まさに芸術。

彫刻刀で丹念に彫り抜いたその繊細さ、芸術性は高く評価され、国の重要無形文化財に指定されています。

しかしピーク時には200人近く居たといわれる職人は、現在ではおよそ20人ほどとなっています。

そんな状況の中、伊勢型紙を使った新しい取り組み・挑戦が始まっています。


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伊勢形紙協同組合の理事長、林庸生さんに、取り組みについてお聞きしました。

「伊勢型紙をお菓子に取り入れてもらおうという取り組みです。
実は昔から、お菓子に型紙の模様を使っていた経緯がありますし、お菓子の職人さんと型紙の職人さん・・・手作り職人同士、お互いに助け合って、産業振興に役立てばと」

取り組みには鈴鹿市内の4つのお菓子屋さんが参加しました。


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まずは『勢州白子菓子』の『田中観月堂』。
代々続く昔ながらのお菓子に加え、地元にちなんで考案されたお菓子が並びます。


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こちらが伊勢型紙を使った『伊勢型紙金箔かすてぃら』。
金粉の模様になっている部分が伊勢型紙、国の天然記念物『白子不断桜』と
鼓ヶ浦の『鼓』をテーマに、伊勢型紙の伝統工芸士が彫りました。
伊勢型紙の模様をきれいにカステラに写すため、伝統工芸士と相談し、試行錯誤の結果、ようやく完成したそうです。


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カステラは桜の模様に合わせてほんのりピンク色。
桜の風味に仕上がっています。

店主の田中正一さん
「僕もずっと白子で育っていて、白子と言えば『伊勢型紙』。
それだけ大切なので、微力ながら『伊勢型紙』の需要が高まるよう、協力してきたいです」


*田中観月堂 059-386-0061


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続いては、『亀屋菓子店』。
以前から、伊勢型紙の模様入りの包装紙を使うなど、地域の伝統文化を大切にしてきたお店です。

その亀屋さんの伊勢型紙にちなんだお菓子が『染型焼(そめかたやき)』。
昔から作っていた馴染みのお菓子に、焼印を押して、伊勢型紙を感じさせる演出。
中には、求肥と粒あんが入っています。


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店主の平野則保さん

「『伊勢型紙』残したい伝統ですから。だから少しでも、みんなで盛り上げて、裾野を広げていくのが、白子のためにもなるし、鈴鹿市のためにもなるし
三重県のためにもなると思います」


*亀屋菓子店 059-386-0311


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3軒目は、鈴鹿銘菓である『小原木(おはらぎ)』を作った元祖ともいえる『大徳屋長久』。
こちらでは、伊勢型紙にちなんだ、2種類のお菓子を販売。
そのひとつ、『ISEKATA(イセカタ)』にはひとつひとつの包装に、伊勢型紙の模様を使用。
昔ながらのお菓子に、新しいエッセンスが光る、そんなお菓子です。
さっぱりと食べられるよう、中の餡に隠し味としてレモン汁を入れているのがこだわりだとか。


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店主の竹口久嗣さん

「地元にある『残さなければならないもの』を、残すために、自分たち和菓子職人として、何か力添えが出来るのであれば何でも取り組んでいきです」


*大徳屋長久 059-386-0048


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4軒目は『久住屋菓舗』。
その名も、ずばり『型紙の里』と名付けられたお菓子は、マドレーヌ生地を使った、和と洋の競演。


*久住屋菓舗 059-386-0142


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そしてこちらが、『田中観月堂』のカステラの型紙を彫った伝統工芸士、内田勲さん。
伊勢型紙を彫って50年、国の重要無形文化財である『伊勢型紙』を守る伝承者のひとりです。
ひとつの彫り方を学ぶのに、5年から6年という伊勢型紙。
その技を教えようと、自分の隣を空けてあると話す内田さんですが、そこに座る人は、今は、いません。

「カステラの話が来たとき、最初はなんだろうと思いましたけど、できあがったカステラを見て、素晴らしいと思いました。
伊勢型紙の需要が減っている中、たくさんの人に知ってもらうため、こういった他業種とのコラボレーションは大切なことです。これからも機会があったら積極的にしていきたいですね」

数百年に渡って、日本の文化を着物に写しだしてきた伊勢型紙。
今、その伝統の技術は、ファッションからインテリア、そして、食の世界へと広がりつつあります。

更なる進化、更なる美の共有。
それが、未来への紋様です。


鈴鹿が誇る伝統技術をまとった4つの店の、伊勢型紙にちなんだお菓子。
どうぞおひとつ、温かいお茶と一緒に味わってみませんか。